COLUMN
- 2022-08(1)
- 2022-07(1)
- 2022-03(1)
- 2021-05(1)
- 2021-01(1)
- 2020-04(1)
- 2020-02(1)
- 2019-10(1)
- 2019-05(1)
- 2018-07(1)
- 2018-06(4)
transcendence

決して芸術活動をしている気はありませんが、アートスピリット(芸術の精神)は哲学のようにあらゆるものに通ずる。
クリエイティブな思考の持ち主にとってこの原理は重要な根幹をなす。
あれかこれかと分断するのではなく、あれもこれもとあらゆるものを偏見なく同等に扱い
取り込んでゆく姿勢にこそ、新たな価値を生む可能性が秘められている。
ここまでは、編集人にとっては至極当たり前の事。
続いて、トランセンデンス(超越)によってあらゆる要素が結合される事を創造と呼ぶのであれば、
この超越の度合いがクオリティや格の違い、即ち"本物"になるかどうかの采配を振るうことになる。
芸術の本質が専門知識ではないとしても"超越"に起因する一つの役割を担っている事は確か。
知識と経験値、それらによる潜在意識が生み出す直感、全てが最終地点に現れる。
なーんて、いかにも頭の良さそうなフリして難しそうに考えたりして。
考えることは人間の特権。
Richter

今、東京近代美術館でリヒターの展示、現代美術館の方でプルーヴェの展示が行われています。
出張のタイミングでどちらも見てきました。10月くらいまであってるみたいですよ。
やはり直に見ると情報量が全く違いますね。感じるインスピレーションの濃さも。
画面越しや紙媒体では決して伝わらないマチエール、その場の空気、肌感、嗅覚。
目だけではなく体全体で感じる事こそが経験値として身になるという事を再認識できました。
今やどちらもそれぞれのジャンルで大人気ですし、今更ここで内容について何か語ろうなんて思いませんが、
前情報抜きにして見てもやはり"本物"だと感じさせる説得力がある。
メジャーだとかマイナーだとか、マスとかコアとか、そういう事はもうね。
オリジナル、リプロ、そんな事もさ。ね。
僕らがカッコいいと思い惹かれるもの、そして追いかけるのはいつだって"本物"。
inspiration

あ、なんかドリスっぽい。
先日伺った、とあるリゾートホテルで天井の一角をパシャリ。
"視覚的な説得力は論理を圧倒して雄弁である。"
好きな作家の本からの引用です。
知ろうとする素人、私は今日も成長の途中。
No need to categorize.

僕らの仕事は"編集"という作業が要。
この"編集"という作業は、単に色や形のコーディネートとか見た目のバランス、素材の組み合わせといったモノとは少し違う。
モノの歴史や背景とか何年代のディテールとか、ヴィンテージ系に見られる情報の類とも違う。
違うと言うより、それだけでは無いと言った方が正しい。
対象の物を深く知るという事は当たり前ですが、もっと人間的で根本的なエレメントについて
より深く知る事でそのモノが持っている"空気感"を感じるようになってくる。
その空気感の中で起こる調和やコントラストによってモノの魅力が掛け算方式で最大限に引き出されたり、新しい価値観が生まれたりする。
とても抽象的ですが、分かる人には頷ける話です。
この話にカテゴリーは存在しません。
振り幅があればある程コントラストは強大。その大小のコントロールも編集の範疇です。
編集というものは業界側の話のようで実は皆がやっている事。
自分が直感で良いと思ったものを購入し、自分の持ち物と組み合わせる。
そこに疑問と追及が加わればなお良い。
「なぜ、自分はこれが良いと思ったのだろう」と深掘りしてゆく事は自分自身を知ることにも繋がる。
流行やカテゴライズ、既に誰かが作った価値観や情報に惑わされず、自分の感性に委ねて物を選ぶ。
経験が重なり、そこにこそ個性が生まれる。。。のでは。
と考えながらゴロゴロする近頃。
最近、"空気感"というワードから辿り着いたこの本は建築家であるペーター・ツムトアの「アトモスフィア(空気感)」 。
建築家ならではの思慮深い考察で空気感・雰囲気は何からきているのかという問いに解を見出します。
素晴らしく美しい本でした。
KOTO BOLOFO

エルメス社外秘の工房に無制限に立ち入ることを許可された世界初のフォトグラファー " KOTO BOLOFO "。
2002年当時のエルメスのトップ、ジャン・ルイ・デュマ氏とコト・ボロフォ氏の出会いから全ては始まった。
デュマ氏の高祖父とボロフォ氏の出生地である南アフリカ・レソトに関係する意外な繋がりとストーリーに
意気投合した2人は交流を深め、この宝物のような写真集は生まれた。
ケリーバッグ、パフューム、服や靴、シルクに車、アーカイブルームまで、
あらゆる部署ごとにまとめられた仕事風景や職人とモノたち。
ため息が出るほど美しいドキュメンタリー写真集です。
内容もそうですが写真家の作品として写真自体が美しく、相乗効果でより魅力的に映ります。
機会があれば目を通してみてください。
少し話は変わりますが、
今までエルメスに関する書籍や取材記事などたくさん目を通してきました。
現在、DeSotoのプライベートプロダクトの一部として革の製品を手掛けていますが、
ヨーロッパの伝統技術で革製品を手掛けていく上で、このエルメスというワードは絶対に外せない。
世界のトップメゾンとしての技術的な要素やクオリティの物差しとしては勿論ですが、
"伝統"や"歴史"、さらにはその伝統や歴史の一部を担う職人の"誇り"というモノがどういう形で製品にあらわれているのか。
そもそも、なぜエルメスは特別なのか。
何かの取材記事でエルメスの職人に
エルメスの工房は他と何か違うのでしょうか?という問いがあって、
「技術の内容的な事は同じようなものだと思います。違いがあるとすれば妥協しないという事。
同じ技でもその精度を追求するという姿勢。」
とありました。
もちろん基礎的に高い次元での技術と理論・知識を持ち合わせている上での話ですが、
魔法のような特別な事など無いのです。
地味で果てしない手間の掛かる無数の工程の中で、その一つ一つの技術を妥協する事なく、
そして常にもっと綺麗に、もっと美しく、と技を追求し続けていくスピリットこそが特別なモノであり、それは180年以上の歴史の中で培われ、そして確実に継承されてきたもの。
さらにその継承は現在進行形で、故にプロダクトのトップに君臨し続けている。
ネット社会、AI技術、さまざまな分野でのオートメーション化が加速し、機械化・未来化が進む現代においても
トップにあり続けるモノづくり集団の会社が大切にしているモノはすごくアナログで、形の見えない抽象的な事だったりする。
最終的に人の心を動かしたり、惹きつけたりするのはそういう類のモノなのかもしれない。と淡い夢のような事を僕は信じている。
DeSotoのプロダクトではそういった事に意識の重きを置いて制作していますし、
きっと心を動かす何かを含んでいると信じています。
先日のロシアンレザーを使用したバッグは即完売しましたが、また何か熱が高まるような物を制作していきます。
楽しみにして頂ければ。
それではこの辺で。